本記事の概要
技術者が会話で使わない、技術用語を和語や漢語に訳した語を、この記事では訳語と呼ぶ。AIエージェントは、私が指摘した訳語の乾式だけを、47ファイルで置き換えた。置き換えなかった配備は文書とスクリプトの出力に残り、AIエージェントがチャットで返す報告にも出た。記録は、私が個人会社で開発しているサービスのリポジトリと、個人のメモリとルールの変遷のリポジトリにある。
2026-10-12に、私は、報告に出る訳語はAIエージェント自身が文書とスクリプトの出力に書いた語だと指摘した。AIエージェントは、訳語を含む文書をまとめて修正する計画を書いた。この計画による修正は、2026-10-17の時点で、まだ実行されていなかった。
サービスのリポジトリでは、2026-10-17の時点で、アーカイブのディレクトリの外に乾式は0件だった。配備は、同じ範囲の81ファイルに375行残っていた。指摘の後に別のAIエージェントが書いた文書にも、配備があった。この別のAIエージェントは、指摘も報告の修正も受けていない。そのため、報告を修正した後に訳語が報告へ戻るかは、この記録からは言えない。
記事から得られること
AIエージェントに文書を書かせ、AIエージェントから報告を受け取る人に向けた記事である。
- 1語の置き換えで消えた訳語と、文書に残った訳語の量を、表で比べる。
- AIエージェントが3つのステップで書いた、訳語を含む文書をまとめて修正する計画を示す。
乾式の置き換えの後に、私が報告の中で指摘した訳語を、日付の順に並べる。- 指摘の後に書かれた文書にも、
配備が出た経過を書く。
本文の根拠は2つある。1つは、私が個人会社で開発しているサービスのリポジトリの、2026-09-16から2026-10-17までの記録である。もう1つは、個人のメモリとルールの変遷のリポジトリにある、規則の経緯を書いた文書である。このリポジトリは、AIエージェントがセッションをまたいで読むメモリと、規則ごとの経緯を書いた文書を、変更の履歴とともに保存している。
1語の置き換えで消えた訳語と、文書に残った訳語
私が指摘した乾式を、AIエージェントは47ファイルで置き換えた。その後、乾式は、後から書き換えない記録を置くアーカイブのディレクトリの外から消えた。置き換えなかった配備は文書とコードに残り、2026-10には、AIエージェントがチャットで私に返す報告にも出た。乾式はdry-runを、配備はデプロイを、技術者が会話で使わない漢語にした語で、この記事ではこの種の語を訳語と呼ぶ。訳語をまとめて直す計画をAIエージェントは立てたが、2026-10-17の時点でまだ実行していない。
この記事の件数は、私が個人会社で開発しているサービスのリポジトリで数えた値である。2026-09-16に置き換えた47ファイルは、TypeScriptが28ファイル、Markdownが10ファイル、テストが9ファイルである。この置き換えで、乾式を含む行は146行消えた。配備は、この置き換えの対象に入っていなかった。
2026-10-17のmainで、2つの訳語がアーカイブのディレクトリの外に残っていた量を、次の表に並べる。
| 訳語 | 置き換えたか | アーカイブのディレクトリの外に残った量 |
|---|---|---|
乾式 |
2026-09-16に47ファイルで置き換え、146行が消えた | 0件 |
配備 |
置き換えていない | 81ファイルに375行 |
2026-10-12に、私は、報告に出る訳語の出どころを指摘した。AIエージェント自身がツールやスクリプトや文書に和語で書いた語が、報告にも出ている、という指摘である。2026-10-10から2026-10-17の間にmainに入ったコミットには、件名で用語の修正と分かるものが無かった。originにあるブランチにも、名前で用語の修正と分かるものは無かった。
語の一覧と検査でなく、訳語が書かれた文書をまとめて直す計画
技術用語の訳語を防ぐ方法として、私は、語の一覧と検査の2つを採らなかった。代わりに、AIエージェントは、文書とスクリプトの出力の訳語をまとめて直す計画を、次のセッションでも読むメモリに書いた。
1つ目の方法では、語の一覧に、使わない訳語を1語ずつ追加する。2つ目の方法では、検査を追加し、文に出た訳語を見つけて直す。2026-10-12に、私は、一覧が膨大になることを理由に挙げて、この2つを採らないと伝えた。
同じ日に、私は、AIエージェントが書いた訳語を、リポジトリの全部のファイルで直すよう指示した。計画では、報告の訳語でなく、文書とスクリプトの出力にある訳語を、一度に技術用語に置き換える。AIエージェントは、文書の訳語を技術用語に直しておけば、報告で文書の語をそのまま使っても訳語は出ないと判断した。この判断を、計画の理由としてメモリに書いた。
計画の手順では、最初に、AIエージェントがgrepで対象の語ごとの件数を数え、用語集を書く。次に、文書とスクリプトの出力に加えて、コードのコメントとMCPツールの説明文も、領域ごとに担当を分けて直す。テストの期待値も、直した語に合わせて変える。最後に、直した結果をPRにして私に見せる。
計画にある訳語の対応表から、3組を例として次の表に並べる。
| 訳語 | 技術者が使う語 |
|---|---|
版 |
バージョン |
配備 |
デプロイ |
表 |
テーブル |
訳語の対応表は14組で、そのうち13組が、訳語と技術者が使う語の組である。残る1組は訳語でなく、どこで何をしたかが分からない実機を、環境名と操作の具体の名前に書き換える組である。
乾式の置き換えの後に、私が報告の中で指摘した別の訳語
2026-09-16に私が乾式を指摘すると、AIエージェントは、技術用語の訳語のうちこの1語だけをdry-runに置き換えた。その後の2026-10-09から2026-10-12に、私は、AIエージェントがチャットで私に返す報告の中で、別の訳語を続けて指摘した。
乾式を指摘したとき、私は、日本の技術者が会話で乾式とは言わないと伝えた。カタカナのドライランも不自然なので、dry-runと書くよう指示した。置き換えは、文書の本文とコードのコメントのほか、スクリプトの出力にも及んだ。AIエージェントは、出力を確かめるテストの期待値も、同じdry-runにそろえた。
2026-10に私が報告の中で指摘した訳語を、日付の順に並べる。
- 2026-10-09には、テーブルの訳語の
表を指摘した。 - 2026-10-11には、バージョンの訳語の
版と、インデックスの訳語の索引を指摘した。 - 2026-10-12には、デプロイの訳語の
配備と、版と、ツリーの訳語の木を指摘した。
2026-10-09の指摘で、私は、よく使う技術用語が易しい和語に置き換わっていて読みにくいと伝えた。表の1語に限った問題ではない、とも伝えた。
私は、2026-08-28にも索引を指摘しており、2026-10-11に同じ語を再び指摘した。この日の報告で、AIエージェントは、ツールの説明の英語にあるmemory indexを、メモリの索引と日本語にして書いていた。
計画の実行の前に、指摘の後にAIエージェントが書いた文書に出た配備
デプロイの訳語の配備は、2026-10-12の指摘の後にAIエージェントが書いた文書にも出た。2026-10-17に、別のAIエージェントが書いた新しい文書と、指摘を受けたAIエージェントが書き直した文書の両方に、配備があった。AIエージェントは、この日もまだ、文書の訳語をまとめて直す計画を実行していなかった。
2026-10-17に、個人会社のサービスのリポジトリに、今後の作業を書いた文書と、文書の一覧の行を追加するコミットが入った。コミットの本文によると、2026-10-12の指摘を受けたAIエージェントとは別のAIエージェントが、この文書を書いた。追加された行のうち、配備を含む行は、文書に3行、一覧に1行の計4行だった。
同じ日のその後のコミットで、指摘を受けたAIエージェントが、今後の作業を書いた文書を書き直した。書き直した文書を、記録を置くアーカイブのディレクトリに移した。書き直した後の文書にも、配備を含む行が3行あった。このコミットのメッセージにも、配備が1回出た。
2026-10-17の時点で、アーカイブのディレクトリに入っていないファイルのうち81ファイルに、配備が残っていた。訳語が文書に残っている間は、指摘の後に書く文書にも、その訳語が出ることがある。ただし、報告の訳語を直した後に、その訳語が報告にまた出るかどうかは、この記録からは言えない。新しい文書を書いた別のAIエージェントは、私から訳語の指摘を受けておらず、報告の訳語を直したこともないためである。
LLMの提供元が公開しているプロンプトの書き方の指針には、プロンプトの書式が応答の書式に影響しうるという記述がある。この記述の対象は書式で、語の選び方は対象に入っていない。人とLLMの会話については、話し手が相手の語に寄せて語を選ぶ現象を調べた研究がある。この研究の対象は会話の相手の発話で、別の日に書いた文書ではない。別の日にAIエージェント自身が書いた文書の語が後の出力に出るかを、直接測った研究は、2026-10-17の検索では見つからなかった。
1回の会話の中でも、AIが、後の回答を、前に自分が返した回答と同じ形式で書いた例がある。その例は、別の記事「会話履歴をそのまま渡すと、AIが自分の過去の回答を真似しはじめる」に書いた。この記事の記録は、会話をまたいで、前に書かれた文書と後の報告の両方に同じ訳語が出たものである。